2011年7月10日

■「タイレノール事件」

「1982年9月29日、シカゴ近郊に住む12歳の少女が、『タイレノール (アメリカでトップシェアを誇る解熱鎮痛剤)』を、服用したところ、何者かによって、混入されていたシアン化合物によって死亡。

以後計5瓶のタイレノールによって、計7名の死者を出した。

犯人の特定はとうとうできなかった。

この事件で、製造発売元の、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、『タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある』とされた時点で、迅速に消費者に対し、125,000回 に及ぶTV放映、専用フリーダイヤルの設置、新聞の一面広告などの手段で、回収と注意を呼びかけた。
(1982年10月5日タイレノール全製品のリコールを発表)

およそ3100万本の瓶を回収するにあたり、約1億USドルの損失が発生。
事件発生後、毒物の混入を防ぐため、『3重シールパッケージ』を開発し再発売。

この徹底した対応策により、1982年12月(事件後2ヶ月)には、事件前の売上の80%まで回復した。」

私は以前、ジョンソン・エンド・ジョンソンに、勤めていましたが、この会社には、『消費者の命を守る』ことをうたった、われらの信条 (Our Credo) という、経営哲学とも、価値観とも言えるものがあり、社内に徹底されています。

この価値観が、会社を救ったと言えるのです。

企業の価値観は、「会社をひとつにまとめている接着剤だ」と、ジョンソン・エンド・ジョンソンの副社長だった、マイケル・J・キャリー氏は言っています。

また、「何が何でも結果を出すというのではなく、われわれの価値観の許す範囲内で、結果を出さなければならない」とも、言っています。

上記の重大な危機に対して、彼らは、社内で、どんな議論を交わしたのでしょうか?

死者の出た地域だけで、製品を回収すれば良い、という意見も、あったのではないでしょうか?

事件を、公表するのをやめようとか、責任を他に転嫁しようという意見も、あったかも知れません。

そんな中で、迅速に、正しい判断を下すための唯一の方法は、企業の「価値観」に、立ち戻ることでした。

それは苦渋の決断でしたが、企業にとっても、消費者にとっても、長期的に見て、最善の決断でした。

私たち個人も、この価値観について、真剣に考える必要があります。

「価値観」とは、「自分は何を基準にして、どのように生きていくのか」という問いに、答えるものだからです。

あなたは、何を自分の行動の基準にして、生きていますか?

それを書き出してみると、人生が変わるかも知れませんよ。

 

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